探偵事務所との契約で、念のため2日間の調査をお願いしていた。これは、もし証拠が取れなかったとしてもまた別日に調査するといった契約内容だ。
探偵事務所に頼むと、安くはない金額を払うことになる。だが、証拠のとれる確率と金額と気持ちの折り合いをつけて決断していかなくてはいかない。
今日も仕事だ。夫はまた、「今日の仕事は、遅く出ても大丈夫だから。」と子どもと私を送り出す。
職場に着いて、携帯を見る。カウンセラーさんからの連絡は無い。夫はまだ家を出ていないようだ。
仕事を淡々とこなす。そうこうしているうち、カウンセラーさんから連絡が入った。
「ご主人は、使用駅の近くに車を停められ、電車で移動されています。」
電車で移動はいつも通りである。車で向かわなかったということが分かった。
しばらくして、また連絡が入った。
「ご主人は、不倫相手と接触し、ショッピングモールに入られました。お店を見て回られています。」
ーーー今日は、ショッピングですか。楽しそうですね。
妻は仕事をしているというのに。どういう思考回路をしているんだろう。
おやつ時の休憩があり、再び携帯を見てみた。すでにホテルに入ったというLINEが来ていた。
ーーー…少し本人たちにとって良い連絡を入れてみようか。
私は、夫にLINEを入れた。
今日は仕事が早く終わったから、子どものお迎え行けるよ!
ほどなくして、夫からLINEがきた。
ありがとう。ちょっと仕事でトラブルがあって、遅くなりそうだったんだ。
ーーー白々しい。
夫は、お迎えというタスクがなくなったことで、相手と思っていたより長く一緒にいられることを喜んだだろう。相手も同じだ。これでより長くホテルにいたという証拠になり、証拠を見る人にとってより悪質性を感じるであろう。
しんどいなぁ。と思った。
自分でした行動だが、体が重くなるような感覚だった。
お疲れ様を皆に伝え、私は職場を出た。子どものお迎えに行かねば。
子を迎え、家に帰り、夕食の支度をする。子どもには明日の準備をするように言う。子ども同士の小競り合いが始まる。たしなめながら宿題を見たり、子どもの話を聞いたりしていた。夫はまだ帰ってこない。
結局帰ってきたのは、夜の10時を回っていた。
ーーー少し遅くなるとは思っていたけど。ここまでとは。
夫は、トラブルがあったことを饒舌に話しながら、夕食をつついていた。ちょっと疲れたからおなかがすいてないんだと言いながら、大半を残していた。
そりゃそうだろう。相手と食事も済ませているんだから。
私は、大変だったんだねと言いながら、夫を労っておいた。
夜のカウンセラーさんとの電話が、少し楽しみになった。
コメント