誓約書

私にとっては気の重い連休が過ぎた。

子ども達は学校だ。

弁護士だの不倫相手がどうのという話をするよりずっと前から、私は休みを取っていて、夫とどこかへ出かけようねと言っていた日が来た。

「…病院に行こうか。」

泌尿器科の診察を入れることにした。経過を見てED薬の調剤をしてもらうのだ。

「わかった。」

夫はすんなりと応じた。

「…それと、喫茶店とかでいいんだけど、誓約書を書いてほしい。」

私には考えていたことがあった。

夫からは、離婚をすることはできない。
ただし、もし不倫相手と切れないままだと、子ども達にも悪影響だ。
父親としてもちゃんとした態度を望む。
夫婦としてやり直せるなら、書いた誓約書を守ってくれるなら、私も過去の事を水に流す努力をしよう。

誓約書作成を外出先でと提案したのも、家の中だと逆上する可能性もあったから。
正直に話してもらうためにも、その方がいいと思った。

病院に赴き、ED薬を処方してもらった。

昼食と誓約書を書くために喫茶店に入る。チェーンの喫茶店なので、全国どこにでもある。
看板を見るたびに、誓約書書いたなとか思うんだろうか。と、ふとそんなことを考えた。

以下は誓約書に記載した内容

・不貞行為の確認（期間や回数など）
・反省と謝罪
・接触禁止
・再発防止策
・夫からの慰謝料
・繰り返した時の制裁
・将来の離婚条件
・その他の誓約事項
・口外禁止事項

これ以上最低な父親、夫にならないようにペナルティを設ける必要があった。
内容も私の弁護士さんと話をして、決めた条項である。

内容を確認しつつ、話をしていった。交際の期間は５年に及んでいたと正直に話もした。
性行為の回数も、月に２・３回と仮定すると、ゆうに三桁を超えた。

夫と話をしながら、私はずっと体を刺されている感覚だった。
子どものイヤイヤ期で私が苦しんでいるときから夫は外で不倫をしてきたという事になる。働かなくてはと思い、子どもの夜間授乳が終わらないまま仕事復帰して頑張っていた私は何なんだ。
昼は働き、帰ってからは家事・育児。終わらない仕事は持ち帰って夜中に仕事をしたりした。

頑張ろうと思ったのは、夫と子ども達の為だったのに…。
私の何がだめだったのか？

「家でプリントアウトして、印鑑をおしてもらうよ。そのあと公正証書にするけど、いいね？」

「厳しすぎない？もう相手とは関わらないんだから。それにレイへの感情もあまりないし…。夫婦として続ける意味ある？」

誓約書に書いたにも関わらず、反省の態度は無いのか。
何度も期待して、絶望している。期待しない方がいいのは分かっている。
でも、今はまだ夫であり、子ども達には父親だ。

「きちんとした態度を見せてください。」

口汚く罵りたい気持ちを押さえつけて、喫茶店を後にした。

これを公証役場にもっていかなくては…。